8/1は大切な人の誕生日。
その少女と出会ったのは14年前の春のこと。
私は18歳で、少女は9歳だった。
インターネット上の、とあるHP。
所謂「自殺系・精神系」という
ネットの暗闇のひとつ。
私はそこに集う、おおよそ大多数の人から見ると異常と想われる連中の
話し相手として毎晩、そこに居た。
安定剤を飲まなきゃやってられない奴や、リストカットを繰り返す子。
そんな連中の話し相手ってことです。
そんな場所に現れたのが、その少女。
若干9歳にして既に小学校には通わず、毎日読書とネットをする。
2年生で登校拒否になり、結果として卒業まで行かなかった。
ただ、抜群の洞察力と知力・感性は9歳が持つには
余りにもアンバランスな高いレベルにあった。
芥川龍之介をこよなく愛する文学少女。
話していて舌を巻くほどの文章力と展開力、見え隠れする厭世観。
彼女も明確な消失願望を持っていた。
何度となく自殺未遂を繰り返した彼女は、それでも死ぬことはなく
少しずつ年を重ねた。
他人にはほとんど心を開こうとしなかった彼女は、何に惹かれたか
私にはいろんなことを話してくれた。
おおよそ、心に問題を抱える子に共通することは家庭内の環境の問題であるが
彼女もご他聞に漏れず、それなりに複雑な家庭内問題の渦中に居た。
信頼できる身内が欲しかったんだろう。
いつしか彼女は私を兄代わりにし、私も兄として接した。
そんな「妹」が13歳になったとき、彼女は突然、国外に飛ばされた。
親の意向だったのだが、オーストラリアに飛ばされ、次にニューヨーク、
最後はカナダの北のほうの名前も分からない町。
右も左も分からぬ土地で、それでも彼女は何とかネット環境を見つけては
日本語環境もないPCでアルファベットだらけのメールを私に送ってくれた。
細く細く続いたやり取りが、それでも彼女の精神安定剤にはなったようだ。
行った時もそうだが、帰ってきた時も突然。
相変わらず自宅には時折しか寄らず、あちこちの公園でジプシーのような
生活を送りつつも、バイトを探し、少しずつ自分のペースで生きる術を
覚えていった。
8年前、突然京都にやってきた。
はじめて見た彼女の姿は16歳とは思えないほど大人びていた。
それだけの人生をやってきたんだろうと納得した。
京都に来た彼女は私の隣で、ただただ泣いていた。
「逢えて良かった」というのは、きっとお互い本音なんだろう。
そんな彼女も自力で大検を通過し、大学生になり、
そして来年の春には社会人。
某大手IT系の企業に就職が内定したようで。
やっぱ、元の出来が違うんだな。。。
「やっぱり誕生日がちょうど半年違いだと、私が運気上昇したら
お兄ちゃんの運気が下がるんじゃないかな？ｗ」
そんな減らず口も叩けるようになって。
たった1度だけしか会ったことはないけども、
きっとこれからも会う事はないのかもしれないけれども、
メールで互いが共有してきた14年の時間は、これからも積み重なっていく。
出逢った頃と変わらぬ知性と感性。
ただ消失願望は薄れ、穏やかさをちゃんと伝えてくれるようになった。
全ては生きていればこそ出来ること。
今日は貴女の24回目の誕生日。
また来年も8/1を祝おう。そして2/1を祝ってください。
貴女が望む限り、私は貴女の兄なのだから。
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